あゆ後アマゴ、二兎を追うものは・・

野池の小鮒釣りに始まった私の釣り遍歴、河口でのハゼ釣り、波止の投げ釣り、筏のチヌ釣り、ボートでのヒラメやアオリイカの泳がせ釣りへと変容を遂げてきた。
そして、渓流釣りにおいては、餌釣り、テンカラ、フライフィッシングへと進化して、とうとう鮎の友釣りのページが1枚加わることになり、最後はやはりへら鮒で終わるということになるのだろうか。
金もかかって結構大変だが、女遍歴に比べると罪がなくていい・・・?

この鮎の友釣り、昨年・一昨年と夏場に一度づつ経験してみて、面白さを実感したわけだが、何といってもあまり歩かなくていいのが老体には有難い。
このところ仕事や台風・大雨による増水が続いて、1ヶ月以上悶々とした日々を送ってしまい、7月28日は本当に久しぶりの釣行である。
毎年この時期になると水温が上昇し、虫達のハッチも少なくなってドライフライへのアマゴの反応が極端に悪くなる。
そこで朝と昼は鮎釣りに興じて、夕まず目だけフライを振ろうというのが今回の浅ましい魂胆である。

この時期、鮎とアマゴの両方愉しめる川ということで、迷わずT川へ~♪。
同行はアマゴ一筋のN氏、中流部で私を降ろして勇んで上流へ向かっていった。
川に降りてまず水温を計ると14℃、鮎には少し低すぎる感じもしたが、天気もいいことだしそのうち上がってくるだろう。
いくぶん増水気味の押しの強い流れを転ばないよう慎重に進んで対岸に渡り、仕掛けをセットして目の前の渕へ友鮎を送り込んだ。

と、ここまでは筋書き通りで順調だったが、肝心の鮎の影が見当たらない・・・!
追われる気配もないし、苔を食む時に見せる白くギラリとした光が全く見えない。
瀬の方がマシかと思い、少し緩い瀬の方へ移動しても状況は変わらない。
しかし、チビアマゴだけは相変わらず元気で、目印に盛んに飛びついてくる始末。
下流の方から来た鮎師の二人連れも『どうや、釣れるかぁ、鮎が居らんやろ・・!』
といった調子で、釣れない理由を魚のせいにするのはどこの釣師も同じである。

そうこうしているうちに、上流へ向かったN氏がまだ2時間ほどしか経過していないのに引き返してきた。
どうやら上流の青い橋の上手で斜面が崩落し、通行不能になっている模様。

gakekuzure

鮎釣りが不調で進退きわまっていた私としては、まさに渡りに船。
あっさりと鮎釣りを止めにして国道まで戻り、迂回して上流部へ向かった。
というのも、確か去年の8月5日にF氏と一緒に上流部に入り、F氏が尺アマゴをヒットさせたのを思い出したからである。

時間はまだ11時、昼飯前の一勝負と昨年の尺アマゴポイントの流れにラインを投じた。
しかし、反応してくるのは15cm以下のチビアマゴ君のみ。
今年の魚影の薄さとあわせて、入渓時間と少し多めの水量が災いしたか、2時まで粘ったものの16㎝までのアマゴを数匹キャッチしたのみに終わった。

20070729134130

昼食と昼寝をたっぷり愉しんだあと、いつもの最上流部へ降りたのは4時を少し回っていた。
しかし、夕まず目なら何とかなるだろうというささやかな期待は、ここでも見事に裏切られたのである。
”夏アマゴは嫁より手強い・・・?”という教訓を新たにした一日だった。
ふと、『今年のアマゴも、もう終わりやね!』という言葉が、ため息とともに漏れていた。
暗くなるのも少し早くなったような気がして、季節が確実に動いている。
涼しい風の渡る谷あいでは、もうヒグラシが鳴き始めていた。(O)