リセット

人は痛みや苦しみというものによって生命の危機を事前に感知し危機を乗り越えて繁栄を謳歌してきたのであろうと推測する。
反面、いつまでもその危機感というものを持続し続けていると緊張が自身の対応能力の許容範囲を超えてしまい、逆効果を生み出し自らその生命の持続を諦めてしまいかねない危険性をもはらんでいるのだということを自覚し、忘却という都合のいいものを準備しているのである。

手取川へ再び、パートナーはN氏である。

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SNM取水堰堤より4:00入渓、朝一の視力はティペットを結ぶにもフライを結ぶにもあまりにも衰退しすぎた二人がなんでこんなにも早くから入渓してしまったかというのを分かり易く書くと長くなるので簡単に言ってしまうと、幸運にも一番乗りしてしまったが夜明けを待つ間に二番組到着、2時間歩くので先に入っていいかと相談されOKしたが、3番組まで来られるとどうにもならないので早々に入渓したのである。

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入渓から暫くの間見えないフライに苦労し、かなりの勢いでスプラッシュがあったり全く見失ったフライにポンと出たイワナを焦点の隅で気づいて大合わせをくれるがドラグがかかっているのは必至、合うはずがない。
最初のHitはやはり流れるフライをしっかり確認できる明るさになってからであった。

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川原の広い場所では連続でHitしてくるが、川原が狭まったところでは先行して上流を目指している二番手組の影響かなかなか出てくれない

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気合を入れて望んでいれば先行逃げ切りを選択したのだが、二番手、三番手を予想していたものだから朝一の入渓車の数を確認して午後からのんびり入るつもりであったので思わぬ一番乗りに少々迷いが生じた。

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2時間歩くといっていたがそんなに歩くはずはない、せいぜい1時間も歩いてくれればいい、それが30分であっても同じ釣り人として気持ちは分かる。
反応がなくなったところが彼らの良心の程度、そこまでこのSNMを楽しめれば十分である。
この谷の流れはかなり速く重い、こんな流れに住んでいるからなのかここのイワナは引きが強く22~3cmの奴でも掛けた後の上流への引き込みはかなり楽しめるものがある。流心からシュパっと出るイワナも珍しい、瀬の多い谷で優位に立つための独特な捕食習性を身に付けている様だ。紫がかった体側のパーマークも一層輝いて見えるのは私だけではなくN氏も同じような感慨をもらしていた。
上流に行くに従い渓相は美しく魅力的になり魚の反応も増してくる、体力に自信がなくとも先行が全くない状態なら多分帰りの川通しの辛さを思うことなくとことん行ってしまうのではないだろうか。
入渓から6時間、10:00頃からぱったりと反応がなくなった、このあたりから先行は釣りを開始したのだろう。帰りに1時間ほどのところである、二人の今日の体力とやる気を思えば丁度良さそうな所からやってくれたものだ。
この地点から引き返すのに二人とも何の不満も感じないほど十分な釣りを楽しんだ。

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下流へ向かい日陰で昼食にする、N氏は少々お疲れ気味で昼食後すぐに寝息を立てていた。私も変わらず、いつの間にか日影が後退し強い日差しが容赦なく照らしていたことに全く気づかずに熟睡していたそうである。

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午後から昼食をとったキャンプ場跡の辺りを遊んでみた、放流が結構な数されているようで日中の神経質な反応ではあったが飽きないくらいにHitしてくれてN氏いわく「俺はこの辺りでも十分楽しいわ」と

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イブニングはキャンプ場と取水堰堤の中間辺りをやるか、せっかく来たN氏初めての手取なのでもうひとつくらい他の谷も攻めてみるかとN氏に聞くがお任せするとの事、イブニングなら型は小さいがボコボコに出る谷がある、入れ食いを楽しんでもらおうと谷を移動した。
これが良くなかった、いつもなら一投目からパックリ難なく食ってくれるのに反応がない。今日は日が悪かった、二人で2~3尾の寂しいイブニングになってしまったが、昼間に十分釣っているので余裕を持って早めにきりあげた。
私的にリセットは完了したのであります。