信心が足りない…

久しく手取水系を訪ねていなかったので瀬波の川歩きがしたくなった。
釣りがしたくなったと書けないところが辛いのだが。
瀬波…一番乗りしたいのは山々なのだが未明から一人で入渓するには少々怖い。同行者を募っても遠い・歩くのが…・釣れない・しんどい、様々な理由でお断りされてしまうので一人で行くしかない。必然的に二番手三番手の時刻に取水堰堤車止めに到着するよう出発する。朝7時過ぎ到着、え?一番乗り?うそ!と思いきやもう一つカーブの先が車止めだった。まぁ、いいやどうせ二台三台は停めてあるに違いない、スペースが狭いからここに停めてボチボチ行こうと準備していたらカーブの向こうから二人連れが歩いてくる。「釣りですか?」この格好が沢登りにでも見えるかといいたいところだが笑顔で「ええ、ボチボチやってみようかと」。
あ~ぁ、先行ならさっさと行って欲しかったなぁ、わざわざ間をおいて来たつもりやったのに…少し寝てから行くことにするか。内心ほぼスケジュール変更を決意してコミュニケーション参加。
岡山からきたという50代半ばの二人は北陸の渓をあちこち周っていると言う。15年前に来た時は40cmが上がりましたという一人は古いガイドブックを見せて早くに来たが先行者があるので他へ行こうと思う、どこかいいところはないかと聞く、岡山からはるばる!と驚くと京都もさほど変わらないじゃないかと突っ込まれるがやっぱり随分違うだろう。普段は大山辺りをやっているんだという、(うん、まぁ至極当然)、大山の辺りも釣り人が多くて釣れなくなったがどこも一緒だねと、こと瀬波に関しては15年前のほうがもっと多かったような気もしないではないが。
先行者は1台だけだというので、2番手でも釣れますよ、私は少し寝てから行きますので瀬波をやったらどうですというが2番手は嫌なようだ。最近は来ていないが大杉谷、岩屋俣谷、明谷川辺りなら釣れるのではないかと生半可な返事をすると、大杉谷というのはこの川かとガイドブックを指差すがそれは梯川の大杉谷だいうと、ではどの川かと聞き返しもせず、では頑張ってと去ってしまった。
2番手なら少しは期待できるかもしれない、もう少し間をおいてもいいかもしれない等と思いながらももう足は取水堰堤へ向かっている。堰堤を下りると先日来の雨のせいか少々増水気味、瀬はほとんど白泡で釣りにならない、渕尻や巻き返しが狙い目と最初の瀬を渡ると冷たい水が右足に滲み通ってきた、ウェイダーのくるぶしの辺りが裂けている、参ったが予備もないしそのまま行くことにした。
どうやら1番乗りは増水を当て込んで堰堤から釣りあがっているようで、ここぞというポイントを探ってみるが魚影さえ見ることが出来ない。
白泡の下に居るに違いないのだ。こんな時は白泡のど真ん中に3号位の中通しオモリでミミズをドッカリ沈め置いておくとグイッと引き込むのだが…フライではサーモン仕様が必要になってくる(^^)
流速が早すぎてウェットにも反応はない。ドライで流れ込みの脇に出来る巻き返しを狙うしかない。

P1010103

巻き返しの流れが白泡に吸い込まれる寸前に出た20cm弱

P1010107

渕尻に居たはずの連中は先行者に追い立てられて既に白泡へ逃げ込んだ後である。

P1010113

ゴルジュから流れ落ちる滝の水量がかなり多いようだ、平川といってもいいくらいの流れなのであるが落差は結構あるのだろう、ちょっとした瀬を渡るのにもその水圧によろけてしまいそうになる。
利き足は水が入り込みずっとグチュグチュいっている。重くはないのだが、どうも歩きづらい、左足に負担をかけすぎたのか腰に疲労感を覚え始めた。

P1010116

長い淵の白泡の切れる辺りでやっと潜水艦浮上してくれた22cm

P1010114
ヒメウツギが満開となり、タニウツギはもう花を落としている。
2時間ほど釣り上がったが、どうも先行者と付かず離れずの距離を保ったまま延々とこの状況が続きそうな感じがしてきた。ボツボツは釣れてくるが型がちいさい。潜水艦浮上もほとんどなく、巻き返しから神経質に食ってくるばかりだ。透明にきらめく深場からゆっくりと浮上してくるイワナの楽しい釣りは今日は無理か。

P1010119

水面下がえぐれた岩盤の緩やかにカーブした白泡が途切れる渕尻で岩盤ギリギリに流したフライに飛びついてきた27cm、イワナの引きを楽しもうと軟らかめの2番ロッドを持ってきたが、やっと底へ底へと引き込む楽しいサイズが出てくれた。
ここまでにしよう。右足のグチュグチュ水で歩き辛いし、魚もイマイチ出が悪い。画期的に釣れ出す気配もない。腰もどうも調子悪い。
帰りの渡渉も左足に普段より負担がかかったのかヨロヨロしてしまった。足の造りはしっかりしないといかんなぁ。

昼前に車に帰ってしまって、どうしようかと悩んだが、下流のキャンプ場の辺りでも探ってみることにした。案外魚影は濃い、切って揃えたような20cmばかりが30分で4尾出たが、水量も少なく面白みに欠けるのと、一度グチュグチュのウェイダーを脱ぎたかったので昼食後場所を変えてダム上流を攻めてみることにした。
大杉谷なら型も数も満足できるはずだ、ふやけた右足をまた突っ込むのが嫌になるが大杉谷のイワナちゃんはそれさえ忘れさせてくれるに違いない。

尾添川を通り過ぎ長いダムサイトを抜けて白峰村を越えると緑の村キャンプ場が見えてくる、その少し手前のカーブから白山と別山を望める。白山登山を楽しみにしている愚妻に携帯で撮った写真を送るも「鳩ヶ湯から撮ったの」とトンチンカンな返事が返ってきた。

緑の村を過ぎ白峰スキー場へ抜ける橋を渡り大杉谷林道へ入ろうとしたら、通行止め、工事関係者以外は進入禁止である。ガックリ…、ここで諦めてはいけない。手取本流との出合いから吊橋を渡って最下流からだって大杉谷は入れるぞ!と本流出合いに回り込んで準備万端、さぁ出発と吊橋を渡ろうとしたら、吊橋の片方が落としてある。綱渡りでもして渡れというのか?本流は増水して白濁している、渡れそうにない。
宮谷川出合い付近は片側通行規制してあり車を置く場所が見つからない。三つ谷川も白濁している。ええいクソ、市之瀬駐車場横の本流をやるかと柳谷川と岩屋俣谷の合流する堰堤を見に行くと両方とも白濁、合流する市之瀬駐車場横の本流も妙な色に濁っている。
どうやら堰堤工事花盛りと見える。ダンプやミキサー車が妙に多いと思ったがこんなことだったのか。
風嵐谷川は濁っていなかったが、この谷は林道添いは小さなヤマメしか釣れない、林道終点から少し歩かないと釣れないのでやめにして明谷川なら林道終点から釣れるはずと向かうがここの最下流のダムも白濁…

いったいどこを釣れというのだ?ダム上流は諦めて赤谷や下田原へ行く気力も失った。しょうがない、イブニングは大道谷川で我慢するしかないか。
本日の釣りの皆さん同じ思いであったのか大道谷へ下りて砂地を見ると足跡だらけ、何人が通ったのだろう、こりゃもうイブニングも期待できそうもない。しかも、その水の色がおかしい。濁りというか透明感がなく、どんよりとくすんで外道でも飛び出してきそうな水である。水質が悪くなったのかなぁ。
放流とはいえ綺麗なイワナが夕方ともなると瀬や淵や堰堤、葦際から飛び出してくれていたものだが…
悪い予感は当たるものだ、17~8cmのがたまにスプラッシュしてくるだけ、最後に期待していた堰堤下の淵もモコッと反応1回きりで後はなしのツブテであった。

白山は釣りをさせてくれないのか!…いやいや今日は悪い日だったのだ、あまりにもU川ばかり詣でて手取をないがしろにした罰なのだ、信仰の山、白山。この信心薄き釣り人を許したまえ!信心が足りないのだ、一度は登って手でも合わせておかねば。釣りも楽なものではないなぁ。

釣り師の人生はきびしいのさ、神与え給い、神奪い給う。故開高先生宣う

石川
爽快渓流フライフィッシングに魅せられて