前鬼川へ

ゴールデンウィークは奈良吉野、北山に限る。のではないか?…
渋滞なし、釣り人少ない、羽化が活発になり餌釣りには厳しいが毛鉤師には優しい。
少し奥に入ると渓谷が深いので家族連れのキャンパーや川遊びが居ない。
そんなことで気合さえ入っていれば、この季節楽しいフライフィッシングが楽しめる確立は高いのである。
H氏、S氏とGW釣行の打ち合わせは簡単に決まった。所用で1日遅れるS氏を待って前鬼をゆったりと楽しんだ。
私とH氏はS氏合流の前日、吉野北俣川で先に楽しませてもらうことにした。
大迫ダムで待ち合わせ、右岸ダム沿いの道を進み入之波温泉から左岸へ渡り暫く行くと北俣川と本沢(もとざ)川の分岐になる、左方向の橋を渡りバックウォーターを左岸から眺めながら北俣川へ入る。北俣筋のバックウォーターの浅場ではブラックバスがのっこんで居るようで派手な求愛行動があちこちで見られた。
券売り場で4~5台が先行していると聞いた、下流部の大場所や落差のあるポイントを避け(歩くのがしんどいので)上流部の堰堤上の入りやすいところから入る。
大型や数を期待しては居ない。私が巻いた毛鉤に私が気に入ったポイントから渓流の命が飛び出す瞬間、そしてその命のきらめきがラインを通じて伝わる山とひとつになれる瞬間が楽しみでここに来たのだ。
去年とは考え方を変えた。変えざるを得ない状況であるということもあるが何かゆったりとフライフィッシングを楽しみたくなってきたからでもある。綺麗な渓流で澄んだ流れを楽しめたらいい、そしてたまに私の毛鉤に戯れてくれる魚に出会えたらいい。そんな謙虚な気持ちになってきた、そう思うとすごく気が楽で今まで見えなかったものが見えてきて2倍楽しめるのでこれもまたいいものである。
さてさて川に立ったのが8時前くらいであったろうか気温は少し肌寒いくらい、10℃前後であろうか、ドライに出てくれるかな?という気温ではあるが日中は20℃くらいにはなっているこの頃の気候だから大丈夫だろう。
H氏と交互にそれぞれ気に入ったポイントを流していく、さすがに奈良の渓流ではもう瀬に付いている様でしっかりした瀬では必ずといっていいほど反応はあった、20cmに満たないサイズではあるが瀬を走り回る元気ものばかりである。奈良のアマゴはパーマークの辺りが特徴的で濃くつながったように見えるので釣れた瞬間はオイカワか?と思えるような印象をもつがちゃんとアマゴである。
10時頃事件発生、10年ぶりに履いたというH氏のウェーディングシューズのフェルトがいつの間にかはがれていてそれに気が付かないで居た氏が滑って転倒、転倒後も暫くフェルトが剥げているのに気が付かなかったがあまりにも滑るので暫くしてやっと気が付いたという事件、こりゃ大変、本日の北俣川ではフェルトなしでも気をつけていればまぁ何とか遡行は可能だが明日の前鬼本番は絶対無理!こういうときに限って予備を持ってきていない、まだ午前中でもあるので遅れてくるS氏に連絡して持ってきてもらうか吉野辺りの釣具屋で急場をしのげるものを調達するか…
H氏と取りあえずダムまで降りて対策を練るつもりであったがH氏が気を使って私は釣りをしながら待っていてくれという、一緒に降りて調達に付き合うのも一向に構わない気分の私であったがH氏にあまり気を使わせるのもどんなものかと思い直し氏の言うように釣りをしながら待つことにした。
久しぶりに下流の林道が高くなったところを暫く釣ってみた、渓相は昔と変わっていない、ライズもボチボチあり災難のH氏には悪いがいいとこを独り占めしてしまった。
2時間ほどで帰ってきたH氏はウェーダーを調達してきた、吉野の釣具屋でいっぱい売っていたそうで幸運であった、吉野だから有ったようなもので他の河川であればいくら釣具屋を回ってもウェーダーをいまどき各サイズ吊り下げているところはない。
そんな事件もクリアでき、午後は本沢川支流黒石谷、本沢川本流を攻めてみたが日差しが強く頑張った割りに貧果に終わってしまった。

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大迫ダムでS氏を寝て待つ、4時頃到着予定なので3時半に目覚ましをセットして横になった瞬間に寝てしまったようだ

話し声で目が覚めた、セットした目覚ましを止めて又寝込んでしまったようだ。
飛び起きて、早速前鬼へ向かう。まだしっかり目が覚めていない、大迫ダムから前鬼までの道のりはくねくねと曲がりくねって走りづらいがみんな慣れているのだろう、気が付くと後ろはかなり連なってきている。必死で5~60Kmをキープしたがかなりふらついていたに違いない。起き抜けに走る道ではない。
何とか前鬼入り口に到着、後は林道をのんびり走れる、釣り場まで15分程度、走りながらリラックスリラックス、このままのテンションでは遡行中に転倒しそうだ。

久しぶりに立った前鬼はいつ来ても綺麗だ。水がいい、石がいい、森がいい、魚だってきっと…
と、うっとりと釣り支度をしているといきなりH氏にHit、この場所で釣れたら先行者はないと思われる。少し上流の険悪な入渓ポイントから入られていなければ黒谷出会いまでの釣果は約束されたようなものだ。

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必ずアタックのある底石がしっかりした深瀬をS氏が攻めた、案の定瀬の流心から飛び出したアマゴはまぁまぁの型、後残るは私だけ、岩盤底の渕尻につながる深い淵では渕尻から走られ反応がなかった。淵を巻く大きな石の上流の巻き返しをリーダーキャスト、ゆっくり食ってきたのは丁度20cmの可愛いアマゴだった。
これでみんなボから逃れた、幸先がよい。
通常一人でこのコースをやると、3~4時間で黒谷に着いてしまうので、3人交互にゆっくりと丹念に攻めて行こうという作戦だ。
それぞれの毛鉤はベージュ系のメイフライパラ、白系のエルクカディス、黒系のエクステンドボディパラとバラバラだったがどれも反応してくれるが、画期的に反応するものもないといった感じ。捕食体勢にある魚に気づかれずにプレゼンできるかどうかがキーポイントということだろう。
中間点の大淵を越えるまでは慣れないと少々遡行するのに危険なところもあり、オジサン3人協力しながら乗り越えていく。
いいときならここからバコバコ状態になるのだが、本日のコンディションはボツボツと言ったところ。渕尻でライズしてる奴、瀬から飛び出す元気モノ、流れ出しや巻き返しで神経質にアタックしてくる奴やらいろんなパターンで食ってくるので気が抜けない。3人3様のスタイルにそれなりにアマゴも遊んでくれて充実した遡行となった。
予定通りお昼前に黒谷出会いに到着、ここから上流もまだまだいけそうな感じだったが、いってしまうと後戻り出来なくなるのが釣師の業、いけないいけない、腹八分で切り上げるのが一番ということで午前中の釣りを終了。
帰り道の林道から眼下の渓を眺めるH氏とS氏はその深さが30mいや40mはあるなと改めてその急峻さと美しさに見とれていたようだった。
昼食後、昼寝でもしてイブニングは七重の滝下流のバックウォーターから七重の滝直下までを攻めてみることにする。
3時過ぎまでゆっくり昼寝をむさぼり少し元気を取り戻せただろうか。
前鬼筋バックウォーターは大型のブラウンが来るとかノボリが入っているとか色々噂は聞くのだが未だに標準サイズのアマゴしか釣ったことがない。流程も1Kmにも満たない短い区間だがイブニングには結構なライズがあり爆釣したことも何度かあるポイントなので安心できるイブニングステージである。

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sakam

夕暮れまでの2時間ほどでそれぞれ4~5尾を掛けてそれぞれに前鬼を楽しむことが出来た。
280段5~60mの階段を息を切らして林道まで登りお疲れ様でした。
やっぱりいつ来ても前鬼は楽しい。

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熊野川水系にはこんな吊り橋が多くある。こわごわ渡るのも又楽しい。