天竜川釣行記

長野県諏訪湖を水源とし、静岡県遠州灘に注ぐ天竜川は、中央アルプスと南アルプスの間を流れる流程216kmと我が国有数の大河である。
無数の支流を抱え、本流では天竜差しという40cmを超えるアマゴが釣れるらしい。
また、南アルプス3,000m級の名峰群から流れ出す左岸の谷は、真夏でも水温が低く、多くのイワナが潜んでいる。
お盆休みに帰省し、”ついでにちょっとイワナでも”と出かけた天竜川水系だったが・・。

8月12日PM3:00、木曽駒ケ岳から一気に天竜川右岸に注ぐ太田切川に到着した。
この川にはキャッチ&リリース区間が設けられており、中流部ではアマゴ、上流部ではイワナが釣れるとの情報を得てまず臨んだ次第。
どうもC&Rという文字に弱い。
釣り荒れせず、そこそこの魚影が確認できるという安心感に惑わされてしまう・・・?

コンビニで入川券を購入し、急いで川を目指すが、入渓地点が判らない。

20060816120513

川沿いには道がなく、木曽駒ケ岳登山のロープウェイの基地となっているため、観光地化しており、ホテルやペンション、キャンプ場等が乱立している。

otagirikawa

さらに、やっと見つけた中流部入渓地点もキャンパーやファミリーの遊び場となっていて、大型が潜んでいそうな格好のプールを泳いでいるのは、なんと人間の子供である。

kankou
C&R

やむなく上流へ移動し、地蔵平堰堤のプールに入ったが、直前に降った雷雨の濁りで全く釣りにならない・・・、中流部は全く濁ってなかったのに・・・?
夕まずめまで待ったが濁りが引かないので、上流部にある谷の黒川に入ってようやく初イワナに巡り逢えた。
サイズは20cm、谷の石の色に近い白っぽいイワナである。

iwana20

その後18cmを一匹追加し、この日は終了とした。

翌13日は、当初の目的である天竜川左岸の谷である、三峰川に向かった。

kanban

この川は、南アルプスの塩見岳、仙丈ヶ岳といった3,000m峰からの冷水を集める流程60kmもある大支流で、川原が広く花崗岩系の白っぽい渓相を帯びている。
流域最終の村で車中泊し、朝4時半に目覚めて林道を進んだところ、上流部が通行止めになっていた。
しかし、よく見ると鍵がかかっているわけではなく、工事用の黄色いロープが硬く結んであるだけだった。
解いていこうかとも思ったが、単独釣行で初めての川だけに無理は出来ないと自重し、その場所から上流を釣り上がることにした。
結果的にはこれが間違いで、ここから先あと15km程上流部あたりからが、そこそこ釣れるのだそうである。

そんなこととは露知らず、まだ明けきらぬ川原に勇んで降りていった。
だだっ広い川原を流れる川のほとんどが瀬の連続で魚の気配はなく、ところどころにある大岩の周りの緩いポイントでたまに反応があるという感じ。

mituminekawa

水温は14℃、30分ほど釣り上がってようやく1匹目のイワナと出逢った。
文字通り、南アルプスの天然水で育まれた、22cm程の綺麗なイワナである。

iwana22

がっちりカディスを銜えたその勇姿は、天竜イワナの名に恥じない精悍な面構え。
その後、カディスを何度も見に来て銜えない奴をウェットを流してフッキングさせたりしながら3km程進み、吊り橋があるところまで釣り上がった。
陽も高くなってきて、この先進んでもこれ以上好転しないと判断し、10時ストップフィッシングとした。
結局22cmまでのイワナが5匹。
魚の薄い区間と知らずに入っただけに、小さいながらも5匹のイワナと出逢え、ひと気の全く無い大自然の中で過ごした至福の時間。
帰り道の林道でばったり出逢った地元の老人の話によると、“最上流部のとある谷まで行けばイワナはウジャウジャ居る”とのこと。
ただ、当然のことながら車止めから相当歩かなければならないらしい。
“来年また来よう”そういう想いを巡らせながら、天竜峡を後にした。(O)