愛知川神崎川にて玉砕す

5月に増水の為ほんの少しだけ釣りをしただけで切り上げざるを得なかった神崎川。あれ以来どうしてももう一度遡行してみなければならないという思いが毎週の如く湧き上がるのだがT川、U川とグラマラスな彼女たちに翻弄されて思いを遂げられずに居た。
9時半に京都を出て11時には瀬戸峠道の下り口に到着、2台の先客があったが沢登りだろうと気にも留めずウェイダーを履き雨の準備と弁当、念のためザイル1本をデイパックに詰め川へと向かう。
前回の記事には少々誤りがあったようで下り口の谷はジュルミチ谷ではないようだ。今回は谷を降りず登山道を下りた。よく踏まれた登山道で歩いていても気持ちが良い。20分ほどで川原へ到着、ここもまだジュルミチ谷出合ではないことが後に判明する。
早速毛鉤を結びたたき上がってみる、小さいがイワナのような魚影を発見
#14QBPを流し込んでやるとフワッと浮いてきたが見切られた。#14は大きいのだろうかと#18に変えて流してみたが無視された。結構シビアに見てくる。
ほんの10分も釣りあがらないうちに上流でオレンジのラインが舞っている。参った、沢登りではなかったのかとがっかりしながら話しかけてみるとそのフライマンは子供さん連れでジュルミチ谷にイワナを狙いに行く途中なので本流はどうぞという。彼の話によると私が川原に下りた地点からまだ左岸添いに登山道は延びており白滝谷出合で増水時の渡渉の為に設置されたワイヤロープとリフトのところで右岸に渡り天狗滝を高巻きさらに上流へ続いているとの事である。
本流はどうぞと言われても、はいそうですかとすぐ上から釣り出すのは気が引けたので、ジュルミチ谷らしき谷までなるべく川筋を遠巻きに歩き出合上流から再び釣り始めた。
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広い淵が幾つか続く、魚は渕尻の浅いポイントに付いているのだが渕尻の下は必ず落差のある落ち込みか早瀬になりロングキャストではラインとリーダー、ティペットに掛けたスラックが延びきるまでに出てくれなければドラグがかかってしまう。スラックを掛けて落とした瞬間に出られて合わせが効かなかったり、なかなかここの流れは難しい。何とか20cmほどのアマゴを掛け、撮影しようとしたら針が外れてしまった。
浅い流れでは魚は出なかった。沢登の人影や釣り人が多いせいなのかどうか分からないが大淵でしか出ない。
白滝谷出合を過ぎ両岸、壁になった淵で出せるだけのラインを出してロングキャストするがなかなか思ったところにフライが落ちてくれない、実際コントロール可能なロングキャストは15m程度ではないのか?と未熟な腕を棚に挙げドラグ掛かりまくりのフライに出てくれないかなぁと期待するが無理な話である。
と、この淵の上流から二人の沢登りが泳いで下ってきた。この淵は泳ぐしかないから沢屋さんはみんな泳いで渡っているのだ、出るはずがない。私も泳いで上流へ向かうと早いのだがウェイダー履きでは無理、次からこの渓を遡行するには沢屋スタイルで来なければならない、ここまで来るにも大石を登ったり降りたりでウェイダーの鬱陶しさに辟易していたところであった。
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仕方なく右岸を高巻くが息切れするほど高巻かなくてはならなかった。
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ここから天狗滝までもうじきであるが、以前この辺りからいい型のアマゴが良く出た記憶が蘇ってきた、谷尻谷出合の滝壺も良さそうだが先ほどの沢屋さんが登ったに違いないと思い飛ばした。
この少し上の岩盤で狭められた淵を上から見下ろせるポイントがあり気配を察知されないようゆっくり覗き込むと白っぽい大きな魚が悠々と泳いでいる、ほとんど真上からキャストしなければならない。3m下の流心の脇にフライを落とすと白い魚体が浮いてきた…大きい、フライにパクッと食いついたように見えたが合わせても何の抵抗もなかった。その後もそいつは隠れもせずあちこちと捕食に忙しく動き回っている。フライサイズを落としてもう一度狙ってみたが今度は先ほどのとは違う少し小さめのが見に来ただけであった。こいつも優に尺は越えていた。なんだかバカにされているようでどうでも釣ってやると白いボディのカディスに変えてみたが今度は何の反応もない、ピーコックボディのカディスならどうだ!…反応した…が直前で引き返す。何度も反応してくるのでフラッタリングをかましてやると突然水面を割りジャンプして食いついてきたのは最初の馬鹿でかい奴だった。ヤッタ!と思ったがフッキングしていなかった、真上に近い角度で出られると合わせが早くなってしまう、通常の視線ならジャンプして出た魚の合わせは着水を待って合わせるのだが真上から見ていて出られると慌てて早合わせしてしまう。この後も反応したり無視したりと完璧におちょくられ約1時間ほど私の方がこのポイントに定位してしまったが結局獲れなかった。深い場所に居る魚はよく見ているとかなり忙しそうだ。上下左右の流下物に全て反応し切れているわけではないのである。私の魚の捕食に関する思い違いがはっきりと分かった。浅い場所ならともかく深い場所の魚はフライに気づかない場合がしばしばあるということだ。3度ほどポイントの上を流して出なければ魚が居ないんだと決め付けていたが、そうではないようだ、餌の流下は水面だけではない。思い込んではいけないのだと諭された。
しかし、何度も何度も反応してきては直前で引き返す奴は始めてである。今度は必ずしとめてやる。
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天狗滝である。手前はジャリで埋まってしまっていた、以前は青々とした深い淵で泳ぐのも気持ち悪いくらいであったが、川というものは埋まってくる運命にあるのだろうか。人為的な原因とは思えないのだが…美しい渓谷がいつまでも保たれて欲しいものであると願うばかりだ。
P1000528この川は早朝かイブニングならきっといい釣りが出来るに違いない。天狗滝上流もまだ攻め切れていないし、次はビバーグしかない。