打波川の実力パート2

“釣場は百台の車にして 行きかう人も又釣り人也” 『打波の細道』より・・・。
『Fly Rodders』9月号にて、読者が選ぶ日本100名川の一つに取り上げられ、“アベレージは22cm前後だが、大場所では尺を越える魚が釣れる”と紹介されてからの打波川は、平日でも釣り人が絶えず押しかけてくる超有名河川になってしまったようです。
品川ナンバーを始め、姫路、神戸、大阪、なにわ、和泉、滋賀、京都(我々以外に3台)、福井、石川、岐阜、名古屋、尾張小牧などなど・・・。
また、フライショップの間でも“打波は回復しているようですね”などといった噂が巷に流れ、ベテランから、初心者まで人、人、人が溢れかえっています。
特に鳩ヶ湯温泉前後のA級ポイントは休日ともなると、朝から晩まで、常に誰かが入渓しているといった状況です。
女性アングラーも3人ほど見かけ、釣り場に華があってよろしいのですが・・・!
秋分の日が間近に迫った9月17日、今年2回目の釣行会を打波川で実施しました。
当初は、6人集まって盛大に盛り上がるはずでしたが、諸事情により一人欠け、二人欠け、最終的には3人となり、いささか寂しい釣行会となりました。
夜中に北陸道を駆け、鳩ヶ湯温泉前に到着したのが、朝5時半です。
まずは、打波川中最も魚が濃い場所で・・ということで、鳩ヶ湯温泉下の入渓地点まで進むと、残念なことにもう京都ナンバーが在ります。
仕方なく、取水堰堤の上まで移動するものの、やはりここにも車が在ります。
シーズン終了間際ということで、皆さん気合が入っているようで・・・!(人のことは言えませんが?)
どうしようかと躊躇していると、後から後から車が追い越して行きます。
これでは、キャンプ場の上流部ももう駄目です。
亥向谷へでも行くしかないかと言ってウロウロしていたら、キャンプ場へ通ずる道と本流が離れていく上流部の橋の手前に駐車していた品川ナンバーのボルボが、急に上流へ向かって移動して行きました。
ラッキーなことに3番目の候補に上げていたポイントが転がり込んできたのです。
棚ボタ気分で、早速準備を始めたところ、10分ほどしてから先程のボルボが引き返してきて、“ここから入るんですか・・・?”と、のたまいます。
黙ってうなずくと、悔しそうな顔をして下流の方へ移動していきました。
喜び勇んで川へ降りたものの、水が少ない・・・!!
ここから一つ目の堰堤までは落差のあるポイントが続き、増水しているとかなり釣り辛いのですが、ここまで少ないと、今度はポイントがあまり有りません。
水温12℃と適温ですが、虫のハッチは無く、結局堰堤まで3人ともノーコンタクトのままでした。
ロッドを少しでもジッとさせていると、アキアカネが竿の先に止まり、耳を澄ますとミンミンゼミが弱々しい声で鳴いて、夏の終わりを告げています。
でも、そんな感傷に浸っている場合ではありません。
気を取り直して堰堤を越えていきます。
平坦な流れの緩いところでようやく、本日初めての反応がありました。
3回目のアタックでようやく16番のEHCを銜えたのは、15cm弱の打波ではほんとに珍しいチビイワナです。
ここ3週間18cm以下のチビアマゴ達に、もてあそばれてきただけに、“打波よ、おまえもか・・!”といった感じです。
しかし、その後すぐに22cmのいわゆるアベレージサイズのイワナがヒットし、安心しました。
16番のQBPに浮力が無くなって、沈みながら流れたそのとき、そいつは喰らいついたのです。
小さいのしか釣れなかったのは魚が居ないのではなく、ハッチが無いから魚の集中心が水面に向いていなかったからか・・・。
秋のフライフィッシングの極意を垣間見た気がして、やはり、F氏も言っていたように“ウェットフライに挑戦しなければ!”と、改めて思い直しました。
そこで、16番のEHCをドロッパーにし、オレンジパートリッジをリードフライにして、即席のウェットシステムを創り上げ、アップストリームでキャスティングするものの、反応がありません。
結局、3つ目の堰堤下まで行きましたが、その後は釣れず、早々に切り上げて、キャンプ設営予定地である亥向谷へ向いました。
テントとタープを設営し、昼食・昼寝の後、私は本流へ、そしてF氏とM氏は亥向谷の設営地から上流部を攻めました。
私の入った美濃又谷と本流の出合い前後は、渓相抜群でロングリーダーとラインをを思い切り出して釣ることができる、フライフィッシングの醍醐味を味わえるポイントです。
しかし、取水されて普段は水が少ないせいで、残念ながら魚影が薄いそうです。
浅いポイントではドライで、水深のあるポイントでは先のウェットシステムでといろいろと手を変え品を変えてチャレンジしましたが、全く無反応であえなく玉砕しました。
亥向谷を攻めた二人の方は23cmまでのイワナを仲良く2匹ずつとのことで、“困ったときには亥向谷”とF氏がいつも言うのも納得できます。

P1000231
Mさん…2日間にわたりこのポイントでバラしまくる(–;
亥向谷の一枚

今回はMチャンが不参加で、愉しみにしていたメインディシュのローストチキンが無く、3人でのイマイチ盛り上がりに欠けた夕餉でしたが、炭火でじっくりと焼き上げたとうもろこしは絶品でした。

翌朝は5時に起きるつもりが、少し寝坊をして目覚めたのは5時半です。
朝飯の準備をしているところへ、顔なじみになった漁業監視員のオッちゃんが入漁券の確認に来ました。
状況を確認すると、最近は平日でも釣り人が多いそうで、そのため魚がかなりスレきっているそうです。
話が長引いたのであわてて、朝飯のカレーを平らげ、6時半頃上流へ向いました。
当初の予定では、最上流部のキャンプ場周辺に入るつもりでしたが、この時間ではもう遅すぎます。
鳩ヶ湯温泉の前を過ぎたところ、もうこの時間なのになんと入渓者の気配がありません。
不思議なことに、まるでエアポケットのように核心部が空いていたのです。
あわてて支度をし、川へ降りました。

IMG_FURUSATO
IMG_MURAKAMI

しかし、ここぞというポイントをいくつか丹念に流しますが、渇水と連日の入渓者の影に怯えてか、3人とも全く反応がありません。
そうして、区間の中ほどにある“ここは絶対出なければ”という絶好のポイントに差し掛かったときです。
16番のQBPをいつもよりしつこく10回くらい流して、最後は浮力が無くなって沈みながら流れたそのとき、水中で黒い影が走りました。
産卵を控え良く肥えた25cmのイワナでした。

IMG_0193

やはり、沈めなければ釣れない・・・。
その後、小渕の巻き返し部分でドロッパーにしたEHCに一度反応したのみで、堰堤までノーフィッシュでした。
昼飯まではまだ時間があったので、亥向谷まで戻り、上流部の取水堰堤の上に入りました。
ここではF氏のみがアベレージイワナをキャッチし、私とM氏はボウズでした。

昼飯は定番となったソーメンです。
清く冷たい谷の水に晒したソーメンは格別な味がします。
その後、私とF氏が昼寝をしている間、M氏はキャンプ地近辺を探り釣りし、2-3匹ヒットしたもののキャッチはできなかったそうです。残念・・!

最終日の夕まずめをどこでやるか、いろいろ迷った挙句、私がまだ行ったことの無い下流部の谷、谷山川に入ることにしました。
この谷は、亥向谷や美濃又谷に比べて、堰堤間の距離があり、途中の渓相が良いのが特徴です。

IMG_taniyama

本流との出合いから、車で5分ほど走った辺りから入渓しましたが、相変わらず、ドライフライには無反応です。
そこで、ピーコックボディの16番EHCのハックルの下側とエルクヘアを少しカットし、沈みやすくして流れの巻き返しを狙って落としたところ、沈んだフライをピックアップしたときに、ゴツンといった魚の感触がありました。
そこでもう一度、同じポイントに落とし込み、うまく流れに乗って沈んで行ったその時、ふと違和感を感じてピックアップしたところイワナが掛かっていたのです。
まぐれで釣れたといった感じでしたが、26cmの良く肥えた黄金色に輝くイワナでした。

IMG_0193

その後も、いろいろと試しましたが、後が続かず6時半にストップフィッシングとしました。
今回の釣行会は、3人で10匹前後とかなりの貧果でしたが、打波川の人気というか、魚より釣り人の方が多いのではといった、別の意味で『打波川の実力』を見せつけられた2日間でした。
また、やはり本格的なウェットフライも巻かなければといった、ドライフライへのこだわりを喪失した日々でもありました。
帰り道、仲秋の名月を見ながら、“ボディ材にはラビットファーが面白いのでは・・・?”などと考えてしまう、私は懲りないフライマンです。(O)