源流への藪漕ぎ…記憶

O谷最上流部、最後に行ったのはいつ頃だったろうか…
踏み後もほとんどない林道脇のブッシュに切り込み緩やかな原生林の斜面をひたすた下降し谷底の直前で切り立つ河岸の急斜面に取り付きやっとの思いで辿り着いた谷底の風景は下流部となんら変わり映えしない水と岩の薄茶色い印象しか残っていない。
ただ、ここのイワナたちのまるで毛鉤にじゃれ付くかのように出てくれる無垢な反応は下降の辛さや、必ず待っている帰りの登攀のきつささえ忘れさせてくれる程楽しいものであった。
先週末、雨で断念したこの谷への久しぶりの釣行、今週は何とか大丈夫そうな天気予報に期待して林道奥のゲート前に着いたのは5時少し前であった。
夜間の雨も危険を感じさせるほど強くなく朝方からは晴れてくる予報は白山周辺の広い範囲で確認できたので今以上の増水はないとゲートを越え歩き出す。
不確かな記憶の入渓地点を僅かな踏み後を探しながら記憶と摺り合わせてみるがなかなかヒットする場所が見つからない。
一度小さな谷沿いに降りてみたがやはり待っていたのはザイルなしでは降りられない二段10mほどの滝。無理をすれば降りられそうだったがザイルは1本しか持ってきていない。悩んだが安全優先は基本中の基本、ここは再度記憶と合致する下降点を探すほうが良いと林道まで引き返す。
なんとなく雰囲気のあるブッシュの切れ込みに刃物で切った枝を発見、少し降りてみる、踏み後は見つからないが当時も明確な踏み後などない原生林の斜面を降りていたし何より記憶とほぼ間違いない風景であったから降りることにする。しかし最後の谷底への急斜面を降りるルートがなかなか見つからず僅かに見えている谷底の気配を伺って見るとかなり白泡がたち増水している気配、無理して降りても釣りにならないかもしれない予感が脳裏をかすめた瞬間気持ちが崩れ去った。
やめよう…ザイルで何とかなりそうだが無理は出来ない。若い頃とは違い体力で乗り切る自信がない。降りてきた斜面を引き返す事さえ辛く感じるが増水の谷の遡行、そして再びこの長い斜面を帰らなければならないという思いに打ち倒されてしまった。
初夏のブッシュの低い時期にもう一度来てみる事にして今回は断念した。
何度も降りては上がりを繰り返したものだからこの3時間の間に一日分の体力を消耗してしまった、後はどうしようか…楽なK谷、水引きの早いK谷、藪漕ぎのないK谷…
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H氏に尺か?…残念ながら28

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8番のマドラーミノーを食ってくる、夏はこういう釣りも面白い。

P1010820午前中いっぱいで疲労はピークに、アブのいないところまで降りて昼食、昼寝(どっぷり)
イブニングもこれといった成果なく終了。
古い記憶に頼るもんじゃない。