T川、尺の壁

“朝から支流のH川に入ったけんど、一匹も釣れんかった・・・、長いことこの川に通っとるんやが、こんな事は初めてや!!”と地元の老餌釣り師。
“今年は、雪が少なかったけん、早くからようけ釣りに来とるで・・・、もう魚もほとんど残っとらんやろ・・・”と地元の山菜摂りのおじさん。
活性の低さを予想して、少し遅めの朝9時に到着したとき、いつも必ず入る堰堤上流部には、既に釣師と思しき4台の車が停まっていた。

仕方ないので、支流のH川下流部のコンクリ護岸ポイントからスタート。
水温10℃、快晴微風の絶好のコンディション。
誘惑に満ちたセクシーな流れにフライを乗せ、丹念にプレゼンしていくが全く反応がない。
午後3時までぶっ通しでやって、かなりシビアなコンタクトが3回程あったのみで、結局ノーフィッシュに終わった。

疲れ果てて車に戻る道すがら、出逢った二人の話を聞いて、やっぱりそうか・・・今年のT川が見えてきたような、少し哀しい気持ちになってしまった。
ただ唯一の救いは、昼食休憩直前にNO氏のロッドを絞り込んだ28cmのアマゴ。

28og

残念ながら尺には少し足りなかったが、堂々たる風格を帯びた面構えは、T川セレブアマゴの称号を与えられるに充分な美形の持ち主である。
全体的にまだほっそりしているが、これから出て来るヒゲナガを飽食することで、ボリューム満点の『叶美香』のような姿態に変容していくのだろう・・・?

すっかり遅くなった昼食を終え、夕まずめの3時間を過ごすポイントは、いつもお決まりの最上流部。
いつも裏切られることのない最初の緩やかな深瀬に近づくと、ライズしている。
手前から慎重にQBP16番を落としていった5投目、わずかに飛沫が上がり、反射的にロッドが跳ね上がった。
くねくねと身をよじらせながら寄ってきた待望のアマゴは26cmの美形。

26og

心に染み入るというか、面目躍如の一匹である。
この日まだ結果の出てなかった私に有望ポイントを譲ってくれたNO氏に感謝。

その後、カゲロウのスーパーハッチに遭遇するものの、魚影が薄いのかライズは散発的にしか見られない。
それでも、25cmまでを二人で10匹程キャッチし、7時過ぎにロッドをたたんだ。

20og
25og

結局、私が26、25、23、21、20、20cmのアマゴと、2匹のバラシ。
NO氏は、28、24、20、12cmのアマゴと25、16cmのイワナ。

魚影の薄さはいたる所のポイントで感じることができるものの、ようやく我々FF仲間にとって期待と希望に満ちた今年のT川が動き出したようである。
しかし往復300kmの道のり、飽きもせず週末ごとに通い続けるこの川の魅力とは、一体何なんだろうか?
例え一方的な片思いの遠距離恋愛と言われても、しばらくは通い続けたい。
気まぐれな彼女達との出逢いに心ときめかせるために・・・。(O)