10ヶ月ぶりに憂さを晴らす

梅雨明け前の前線が南下して、白山辺りの渓流は何とか増水も我慢できるくらいに落ち着きだしたのではなかろうかとフライング気味に行って来ました。
まずはU川、本流はフライではもう少し減ってくれないと釣りにならない状態だったのでI谷取水堰堤まで走り、あとは歩いて4つ目の堰堤上から入った。取水堰堤の上流はかなり水が多かったが濁りはほぼなくなってきていたので久しぶりに毛鉤を結びイザ!
先行がないので一発目から出ると思いきや堰堤までの50mほど何の反応もなく、釣り荒れかと諦めかけたが堰堤下の巻きと緩流帯で28クラスを3尾連荘。
この堰堤を超すには以前はロープが必要だったのでここまでと思ったが、脇の急斜面が崩れて登れそうになっていたので行けるとこまで行ってみる事にした。何とか素手で超えられた。堰堤直上のポイントは以前はいい型が入って居たことが多かったので期待が膨らむ。
水量が多く緩流帯と急流の境を狙って毛鉤を流す。以前尺上3本ネットに並べて写真を取った事もあったが、この頃は28、29とサイズダウンしてしまって、それでも同サイズ4本立て続けにヒット出来てこの先の谷が楽しみになってきた。

この堰堤上から先の渓相は次の低い堰堤を挟んで暫くは平水時はどうという事もない渓相なのだが水量の多さに手こずった。
ウェーダーギリギリまで足を突っ込んで岩盤のヘリに足がかりを探り水圧に負けないよう手で支持できる突起や割れ目を頼りに一気に突破。
フライが安定する水面からは20~25程の元気なイワナがモッコリ、速い流れの脇では水面に出ることなくフライをついばむ感じでヒュンと食っていく。

魚はいい感じに出てくれるが落差が次第に増して水圧がきつくなってくる。渡涉出来るところも次第に限られてきて岸際の岩盤を頼りに突破を繰り返すがとうとう足が底につかず足がかりもなくすぐ目の前の石にさえ進めなくなった。林道への巻き道はもう少し上流の対岸、渡渉不可能なため手前の堰堤に戻るがこの堰堤上の手前のコンクリートが深くえぐれて流れが強い。この堰堤の下からは巻き道へは出られないので思い切って恐る恐る強い流れに立ちこんで摺り足で少しずつ渡る。ほんの少しの増水で渡渉にこんなに苦労するとは。水というのは本当に怖いものだ。
やっと対岸に渡り林道への踏み跡を捜すが梅雨の雨で草の丈が伸びすぎて獣道なのか踏み跡なのかわからない。目指す林道は途中から折り返してしまうので兎に角上に登れば林道に出るという保証がない。やみくもに斜面を登ってもいつまでも林道に出ない可能性があるので何とか踏み跡を捜したいと思い、行ったり来たりするうちに時刻は17時に迫ってきた。上って来た谷を下るかどうか判断するにはギリギリの時刻だ。谷下りは水量が多いので上るにはいいが、下るのは足がすくわれてかなりの危険を覚悟しなければならないし、崖を登った斜面も登るはいいが下るのは確保がなさそうだった。
仕方なくずいぶん以前の記憶から確実に林道がある方向に向けて猛烈なブッシュに突っ込んで登りきるしかないと登りにかかり、這うようにブッシュをかき分け滑る転ぶツタに絡まるを繰り返しへとへとになった頃ブッシュの向こうに明るい緑が見えてきた。林道の切れ目に違いないと最後の力を振り絞りやっと抜けられた。林道の折り返し15m程手前であった。あのまま上り続けていたらいつまでも林道には出られなかったのだと思うとぞっとした。
17時半を少し回っただけだったので30分はかかっていないが林道に出られなければ明るいうちに谷下りを始めなければ暗くなるので時刻的にはギリギリ、いや遅かったかもしれない。運よく出られたからほっとした。こんなに判断を迫られドキドキしたのは10数年ぶりだった。しかもこの程度の場所で。増水と梅雨後の草木の急伸をなめた結果だ、これも暫く森に通っていなかった勘の鈍りだ。
林道はそれなりの車なら何とか突破できそうだが(以前は車で入ってきていた、パンクや車底を石に乗り上げる覚悟が出来た上でかといえばそういう事はないとなめてかかっていたのである)歩いても30分程度なので無理をして車で入る必要はない。

18時過ぎ取水堰堤で待っていてくれる車に到着し、暫くクーラーで体を冷やして休憩。疲れすぎた。
携帯の電波の入るところまで下りて、留守電確認後、疲れがどっと出てきて横になるが眠れない。今日は無理して帰るのは止めよう。
いったん街へ出て夕食、翌日の食事と飲料を買い込みSNMを目指す。

兎に角疲れ切っているので早く食事を摂りたい。途中の道の駅で夕食を摂りノンアルコールビール、ビタミン果汁、コーヒーを飲んで何とか少し元気になれた。
そのままSNMを目指し21時過ぎにSNM中流部入渓口到着、途中での休憩が長すぎた。荷台をベッドにして即入眠、朝方寒くて敷布団にしていた寝袋に潜り込んで目が覚めたのは6時過ぎだった。よく寝られたので何とか疲れも取れたようだ。
SNM中流部は昨日の谷とは打って変わってなだらかな渓相、水量も増水気味だが危険性は全くない。
一投目に可愛いのが無邪気に出てくれた。

ところがこの後堰堤まで全く反応なし、正確に言えばもう1尾見に来たが全く食う気配がなかった。
これほど反応がないのははじめてだ。堰堤の下で休憩、朝食を摂ったが、昨日の疲れがぶり返してきた。

さて、この堰堤の上流は普段はあまり水がないので魚も少ないと思っている。しかしこれだけ何の反応もない釣りでは帰るに帰れないし、増水しているから、少ないなりに増水で普段隠れている奴が出ているかもしれないというスケベ根性でいったん車まで帰り、車を移動して堰堤上を偵察してみることにした。
なかなかの渓相であった。まぁ普段こうかというと水量が少ないので水たまりであろう。
すぐに小さいのが出てくれたが、思い通りのサイズだった。全く出ないよりましと上るとまた出る。結構出てくれるなと機嫌がよくなってきたところで、小さな飛沫に合わせた奴が結構な引きで楽しませてくれるなと思ったら、これが31cmあった。

その後23cm程度を2尾追加してまた堰堤。この堰堤下には昔つり橋があったようで対岸に渡る必要があったのだろう。山仕事か、もしくは堰堤上に深く切れ込んだ谷が流れ込んでいるようだが、結構いい谷なのではないだろうかと思ったのだが、気温が上がって暑くてしょうがないので午前中はここまでと引き返す。
堰堤風が気持ちよくて、引き返す前に暫く日陰で休憩した。滝の下の風なら優雅なのであるが堰堤下の日陰で堰堤風で涼むのもなかなかいい。ベストやシャツ、ウェーダーを脱いで一服。いい魚が釣れた後の清々しい満足感を10ヶ月味わえていなかったからことさらに渓流釣りの喜びを感じたひと時であった。

川を帰りながら毛鉤を流していると上がる途中で掛け損なった奴が出てくれた。これがまた29cmあって全く期待していなかった区間で満足ひとしきり、気分良く昼食が摂れる。

キャンプ場の少し下流に行くと携帯が使えるので日陰に車を停めて、昼食。気分もよく、日陰の涼しさに暫く横になってホットコーヒーで一服。やはり寝不足で必死に釣るよりこんな風にのんびりやるのがいいよなぁ。

午後はまずキャンプ場前をやってみた。小さいがヤマメが入っている。20cmを少し上回る程度ではあるが飽きないほど出てくれるので久しぶりにヤマメ釣りを楽しんだ。下流はもう少しいいサイズが出るのだろうか。
その後、中流部でまだやっていない区間に移動したが全く出ない。最初の浅い淵をじっくり流していると50m程上流を若いが子供でもなさそうな熊がひょこひょこと川を横切って行った。長閑なものである。
ほぼ出ないので引き返すかと思うと1尾出る。また暫く無反応、もう帰ろうと思うとまた1尾出る。といった感じで4~5尾拾ったが、サイズは23cm平均と言ったところであった。
昨夜の就寝場所まで上りここまで。
朝一の入渓地点で脱渓。
もうあとは帰るしかない。明日の仕事がなければTOGAまで出張したかった。

今回もエクステンド一本でいったがなかなかいい感じだった。

コメント

  1. og より:

    梅雨明け前でアブが出る直前の北陸遠征、お疲れさんでした。流石にi谷取水堰堤から更に上流へ4つ目の堰堤まで歩いて入るとそこそこのサイズが揃いますね‼️それに増水時の川歩きは改めて怖いと思いました。私も6月初旬に同じi谷の最下流部の淵に足を滑らせて頭から水没し、危うく溺れかけました。お互いにそれなりの歳なので気をつけましょう。
    それにしてもSNMの尺イワナは流石ですね‼️

    • アバター画像 Bird より:

      随分ご無沙汰しております。
      お元気なご様子でなによりです。
      4波で一番いい時期をうつうつと過ごし宣言解除を待って準備していたら蔓防
      毛鉤も鮎針ももうええやろというぐらい巻けましたわ。
      梅雨明け前の雨の降り方が雨雲レーダーを見ていても局地的に予測のつかない降り方をするので休日を待っていたらいつ行けるかわからないのと、仕事も暇すぎなのをいい事に減水直後を狙って行ったのですが、1日早かったようで参りました。
      濁りがほとんどなかったので何とか遡行渡渉出来ましたが、1歩間違えば危ないところでした。
      梅雨時期の草の伸びが早いのわかっているのに踏み跡が分かりづらくなるところまでは気が行きませんでした。地形はほぼインプットされていて距離的にも短かかったのでどうにでもなる状況でしたが、楽をして出たいと時間を無駄に浪費したのとこんな場所でという甘い感覚がいけなかった。
      おっしゃる通り歳なりの行動を取らないといけませんね。
      いつもとは違う今期の渓流(去年もでしたが)残り2ヶ月(アユはもうちょっとあるかな)怪我無く事故なく楽しんでいきましょう。