嵐を呼ぶ男

京都は連日35度を超える猛暑日が続いている、道路上の気温は43度まで上がることも珍しくなくなった。強い日差しに燃えてしまいそうである。
かねてより企んでいた石川SNM川上流域探索遡行、アブが出る前にやってしまわなければならないとH氏と決行することにしたが、この暑さに体力が持つかどうか心配であった。
AM1:30R303熊川宿道の駅でH氏と合流、一路SNM川へ。
5時前に林道終点に到着、先着はなし、珍しい、のかな?…毎度来る谷ではないがこの谷に一番乗り出来たのは初めてである。
後続を引き離すためには1時間は歩いておきたい。早速遡行準備を済ませ取水堰堤へ向かうが困った…もうアブに囲まれている。メジロだ、まだ数は少ないが5~60匹には囲まれているだろう。取水堰堤をおり河原に立つ、河原の砂地にくっきりと足跡が残っていた。ほとんど風化していない、昨日か一昨日のものと思われる。水量も前回より10cmは落ちている、川底の石も茶色みが強くこのところ雨もほとんど降っていないようだ。
取水堰堤から数十メートルも遡行しないうちにアブの姿は消えたので一安心。
もくもくと時計を見ながらの遡行はなかなか辛い。釣りながらの遡行と比べると時計の針の進み具合が倍も三倍も遅く感じる。
15分も歩いただろうか、H氏に「目ぼしいポイントは休憩がてら釣ってみたらどうです?」というと「いや、後続に追いつかれると悔しいからドンドン行きましょう」と先行逃げ切りに執念を燃やしている。
30分も遡行しただろうか前回イイ型をHitさせたポイントに差し掛かった。さすがのH氏もこのポイントは探っておかなければと毛鉤を結んだ。

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通常より水位は低いのかこれが平水なのかよく分からないが今までの釣行の中では一番釣りやすい水位だ、ポイントも多く流速も穏やかである。ただ昨日か一昨日の入渓がなければBestなのだがそうそう世間は甘くない。
1時間は釣らずに遡行するつもりであったが魅力的なポイントが続々登場してくるとついつい毛鉤を流してみたくなる、ちょっとここだけ、1、2回流してみよう…そんな感じで10分に1回が5分に1回になり3分になり1分になり気がつくとほとんど通常の釣遡行体勢になっているのであるがそこはもう取水堰堤から1時間ほどの距離にはなっていた。

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もうそろそろボコボコ体勢に入るはずなんだがと期待するがボツボツ体勢から抜け出せない、やはり昨日やられているようだ。まぁそれでもボツボツ飽きないくらいに出てくれるし型も28cm~20cmと大小取り混ぜて楽しませてくれる。心配していた暑さも全く苦にならない、高度を上げているし谷風も心地よいくらいにふいて快適な遡行になってきた。

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平川から次第に両岸が狭まりだしゴルジュとなってくる辺りから型が良くなってきた、25~28cmと強い引きを楽しませてくれる。

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この谷のゴルジュ帯には通らずはない、ゴルジュといっても谷底は歩きやすい砂礫の堆積が続く。だがこれが少し増水すると全く顔が変わってくる、悪天候を突いてゴルジュを越え帰りにゴルジュを抜けられなくなったという話も聞いたことがある。高度を上げる釣りは天候にも十分注意しないと思わぬところで辛い目を味わう破目になりかねない。

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ゴルジュ帯を抜けようとする直前辺りで丁度正午となり、日陰の岩盤が昼飯休憩に丁度良いところに差し掛かりここで昼食を摂って帰ろうかということになり座り込んだがどうも背後の垂直の壁から落石がありそうで不安なのでこの場所を抜けたところに場所換えすることにした。ゴルジュの終わり辺りの流れが岩盤にぶつかり淵を形成しているいいポイントにH氏が入った。

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一投目、ドラグがかかり反応なし、二投目は完璧に流れに乗り岩盤と大石の間から流れが落ちる直前でグルンと食ってきたのはその瞬間に尺を越えているのがはっきり分かる大物であった。ガッチリフッキングされた奴は流芯に入り落ち込みに逃げようとするところを頭を上に向かせたとたんに半分落ちかけたところから滝登りして上流に向かう。そこへH氏のネットが待っていた。「デカイ!」一言H氏。検寸35cm!デカイ!完璧な魚であった。

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獰猛な顔つきに長い年月を感じさせる野生であった。久しく見ない尺イワナの顔であった。すばらしい奴に出会えて居合わせた私も幸せであり感動した。
尺イワナをリリースしたとたんに急激に空が暗くなってきた、濃い灰色の雲が広がりだし遠くで雷鳴も轟き出した。さてはこの嵐の前兆は先ほどの尺イワナの仕業か…やはり嵐を呼ぶのはいつもH氏か…

今日は満足した、尺も出たことだし、後は安全に帰るのみ。夕立が来る前に半分くらいは下りておきたいと急ぎ下降を開始したのはPM1:00前だったと思う、途中暗雲も立ち去り再び青空が広がってきたが日差しが強く遡行時より暑い。
取水堰堤到着PM3:30、汗まみれであったが気分は最高に良かった。イワナの谷を足だけで遡行する。なんとも言えぬ満足感にあふれていた。

温泉で汗を流して帰ろうかそれとも、せっかくここまで来たのでイブニングも楽しんで帰ろうか。イブニングの方を選択。
比較的入りやすく釣果もそこそこでる谷に行ってみた。登山道の脇を流れる谷である。登山客が続々降りてくるところをこれから登る。PM4:30.
楽な釣り場でイブニングを楽しんだ。

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