T川 忘れ物を探しに・・・

T川と最初に出逢ったのは、もう15年くらい前になります。
まだ寺町二条にあった頃の『プロショップ ゼロ』に居たスタッフの一人に、“幅広の綺麗なアマゴが釣れる川が在りますよ”と、教えられたのです。
その頃の私は、F氏から教わったテンカラ釣りにハマッており、そのためのフックやマテリアル等を購入したり、情報収集のために時折『ゼロ』を訪れていました。
そこで、いつも魅せられてしまうのが、ガラスのカウンターの上に置いてあった、素晴らしい魚体の“T川アマゴ”の写真でした。
早速F氏とT川釣行が決まり、中流部の田戸地区にある最大支流の奥川並川へ入り、そのときは何故か餌釣りでしたが、上流部の細くなった深瀬で、25cmを超える見事な魚体のアマゴに出逢ったのでした。
それ以来毎年のように、数多くの25cmを越える“T川アマゴ”との出逢いがありました。
渓流釣りをする者にとって、尺を超えるサイズを釣るというのはひとつの憧れですが、25cmというのは、釣果としてある程度の満足感を得られる(決勝進出?)サイズです。
特に、T川で釣れる25cm以上の“高時アマゴ”はヒレピンでグラマーときていますから、掛けたあと強烈にロッドを絞込み、取り込みに苦労させられることが多いのです。
そんな強烈な引きを一度でも味わってしまうと、他の川での釣りがつまらなくなってしまうというか、要するに“T川アマゴ”に恋してしまうのです。

しかし、ここ数年前に上流部の山の斜面に出来た『ベ●ク余○』というスキー場のせいで、とんでもないことになってしまったのです。
本流最上流部に左岸から流入する支流は、以前は良型イワナの宝庫で、熊の出没する危険性が高かったものの、入渓すればそれなりの釣果が見込めました。
でも今は、乱開発により、斜面の落葉樹を全て伐採して地肌を露出させたため、雨が降ると雨水が地面にしみ込まず、泥水となって本流に流れ込みます。
流れ込んだ泥や砂は、アマゴやイワナたちの棲家である渕や岩の隙間を埋め尽くし、餌となる川虫の生態系にまで影響を及ぼしています。
真夏の渇水期に行っても水量がそこそこ在るような、抜群の保水力のある山を上流部に持っているT川ですが、建設途上の『N川(T川上流部)ダム』と『ベ○ク余○』によって、ごく普通の川(それ以下?)に変貌を遂げようとしているのは、全くもって残念なことです。

ここ2週ほどの間、子アマゴに遊んでもらう日々が続いたせいで、強烈な引きへの欲求が頂点になりかけた10日の土曜日、何かに引き寄せられるようにT川へ行ってきました。
無料になった湖西道路を飛ばし、2時間で下流部の上丹生に到着。
大物狙いで中流部をやるつもりでしたが、3日前の雨でいつものことながら増水しています。
仕方なく、いつもの上流部マイポイントに立ったのが7時前です。
水温16℃、快晴微風、多少増水しているものの濁りはなく、少しかげりのある半透明の水の色、川の香り、せせらぎの音、いつもの風景が蘇ります。
最初の開けたポイントで早速ファーストコンタクトがありました。
16-7cmのアマゴだと思いますが、何度もQBP16番にアタックしてきますが、いっこうにフッキングしません。
そのポイントを諦め、“T川アマゴ”の実績ポイントに移動します。
そこで、ようやくファーストフィッシュに出逢いました。
紅色の朱点が鮮やかな、16㎝の幅広アマゴです。

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尾根の向こう側の坂内川のアマゴは朱点がオレンジ色でした。
川により多少の個体差があるものの、この山系のアマゴは広葉樹林帯を流れるせいで餌が豊富なのか、どの魚体も体高があります。
実を言うとこの魚が出る前に、フライに近づいた20cmオーバーの黒い影が見えましたが、見切られてしまいました。
大きい奴ほど警戒心が強いのです。
その後もポツポツと釣れますが、型で押したように14-16㎝ばかりです。
そのうち、谷との出合いの上流部で18cmが釣れましたが、25cmどころか、20cmアップもまだです。

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結局、18cm以下を6匹キャッチして、お昼に一旦上がりました。
日差しはまだ強いものの、木陰をわたる風は涼しく、川べりにはススキが頭を垂れ、鳥や虫の声も秋色に染まっています。
今年も、今日を含めてあと3回しか自然渓流に来れなくなってしまいました。
今年はまだ24.5cmが最高で、本当の意味の“T川アマゴ”に出逢えていなかったのです。
昼寝のあと3時過ぎに、忘れ物を探して後半戦をスタートさせました。
ハッチは朝からほとんどない状況で、夕まず目になっても変わりません。
ヒゲナガのアダルトでもハッチしてくれると、中流部の大渕でライズ待ちをするのですが・・・。
とりあえず実績重視で、堰堤の上から上流部を攻めることにしました。
振り始めてすぐの浅瀬で20cm位が反応しましたがフックアップせず、その先の深瀬で17cmをキャッチ。
その後17cmまでを3匹キャッチし、あたりが薄暗くなってきたその時、突然雷とともに雨が落ちてきました。
あわてて車に戻ったところで豪雨になり、本日はこれまでとしました。
またしても忘れ物を拾い上げることができず、不満の解消されない日々が続くことになります。
今年は何故か、(何かの崇りか?)いいところで雷雨に邪魔をされます。
何も悪いことはしてないはずなのですが・・・?(O)